東京地方裁判所 昭和56年(ワ)6055号 判決
一 請求の原因1及び同2(一)、(二)、(四)の各事実並びに同2(三)中、本件意匠において柵柱本体の上端部には外筒よりやや小さい直径の円盤状の蓋体があることは、当事者間に争いがない。
二 右事実といずれも成立に争いのない甲第二ないし第六号証、第一一ないし第一六号証及び弁論の全趣旨によれば、本件意匠は、使用時には柵柱本体を地下に埋設した外筒から抜き出して固定立設し、不使用時には外筒に柵柱本体を降下させて収納する柵柱についての意匠であつて、基本的に管状の外筒と柵柱本体と蓋体とから構成されていること、外筒は直径一、長さ五の比率の上下同一径の単純な円柱形であること、柵柱本体の上端部に外筒よりやや小さい直径の円盤状の蓋体があり、その蓋体の構成は原告が請求の原因2(四)で主張するとおりであることが認められる。
三 請求の原因3及び同4(一)の事実並びに同4(二)中、柵柱本体上端に出没自在の手掛のある蓋体が存することは、当事者間に争いがない。
右事実と被告製品を示すこと当事者間に争いのない別紙図面と弁論の全趣旨によれば、被告意匠は、使用時には柵柱本体を地下に埋設した外筒から抜き出して固定立設し、不使用時には外筒に柵柱本体を降下させて収納する柵柱についての意匠であり、基本的に管状の外筒と柵柱本体と蓋体とから構成されていること、外筒は下部管体とその上部の管状膨出部と更にその上の鍔部とからなり、その各部分が外筒全体の長さにおいて占める割合は、下部管体が約八四・七パーセント、膨出部が約一三・八パーセント、鍔部が約一・五パーセントであり、膨出部は下部管体の約一・一五倍の直径を、鍔部は膨出部の約一・三七倍の直径を有していること、柵柱本体の上端部に出没自在の手掛がある蓋体が存し、蓋体を平面から見ると複数の同心円の最内円の中央に一文字状の模様が表われ、側面から見ると薄く平らな円盤状となつていることが認められる。
四 そこで両意匠を対比する。右認定の事実によれば、本件意匠及び被告意匠はともに、使用時にはその上端に蓋体を有する柵柱本体を外筒から抜き出して固定立設し、不使用時には外筒に柵柱本体を降下させて収納する柵柱についての意匠であり、基本的に管状の外筒と柵柱本体と蓋体とから構成されていることが明らかであるが、成立に争いのない乙第三号証によれば、右のような地中より隠現させる柵柱の基本的な形状、意匠は、すでに本件意匠の出願時において公知のものであつたことが認められる。そして、前掲甲第二ないし第六号証、第一一ないし第一六号証によれば、本件意匠の外筒の上下同一径の単純な円柱形の形状は、本件意匠のみならず本件類似意匠一ないし一〇のすべてにおいて採用されている形状であることが認められ、これらの事実を考慮すると、本件意匠は外筒を単純な円柱形にすることによつて単純明確な構成美を生じさせている点にその特徴があり、その点に意匠としての創作性があることが認められ、これに対し、被告意匠は、その外筒を、その直径が大、中、小であり、各長さを異にする鍔部、管状膨出部下部管体の三部分より構成することによつて、本件意匠の上下同一径の単純な円柱形より生ずる美感とは異なる美感を生じさせていることが認められ、これにより、全体として本件意匠とは別異の意匠を構成しているものと認められる。
原告は、被告製品における外筒の右膨出部は地中に埋設される部分であり、外形的観察上重視されるべきでないと主張するが、被告製品が商品としてその流通過程におかれている場合のことを無視する原告の右主張は失当であつて、採用できない。
以上によれば、被告意匠が本件意匠に類似すると認めることは、できない。
五 よつて、被告意匠が本件意匠に類似することを前提とする原告らの本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却する。
〔編註その一〕 本件登録意匠に関する事項は左のとおりである。
1(一) 原告らは、次の意匠権(以下、「本件意匠権」といい、その登録意匠を「本件意匠」という。)を共有している。
登録番号 第三九三〇〇五号
登録意匠 別添の本件意匠公報に示すとおり
意匠に係る物品 地中より隠現させる柵柱
出願 昭和四〇年五月七日
登録 昭和四九年一一月二七日
(二) 原告らは、本件意匠を本意匠とする次の類似意匠の意匠権(以下、その類似意匠を「本件類似意匠一ないし一〇」という。)を共有している。
登録番号 第三九三〇〇五号の類似一ないし一〇
その登録意匠、意匠に係る物品、出願日、登録日は別添の本件類似意匠一ないし一〇の意匠公報の各該当欄記載のとおり
2 本件意匠の構成は次のとおりである。
(一) 本件意匠は、使用時には柵柱本体を地下に埋設した外筒から抜き出して固定立設し、不使用時には外筒に柵柱本体を降下させて収納して地上の障害とならないようにする特殊な柵柱の意匠である。
(二) 外筒は直径一、長さ五の比率の管体である。
(三) 柵柱本体は、右(二)と同比率で直径〇・五、長さ四の管体であり、その上端部に外筒よりやや小さい直径の円盤状の蓋体を有している。
(四) 右蓋体は、上端周縁部は弧面であり、中央部を同心円に陥没させ、その上面凹部にこれより突出しうる〓状の手掛を出没自在に設け、右手掛は両端弧状の細巾の形状となつている。右蓋体の意匠は、平面から見て複数の同心円の最内円の中央に一文字状の模様が表われ、側面から見て薄く平らな円盤状となつているのが大きな特徴である。
3 被告日向野工業株式会社は別紙図面記載の地中より隠現させる柵柱(以下、「被告製品」といい、その意匠を「被告意匠」という。)を業として製造し、これを被告太田興業株式会社に販売し、被告太田興業株式会社は右柵柱を一般に販売している。
〔編註その二〕 本件に関する意匠は左のとおりである。
別紙〔被告意匠〕
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本件意匠
三九三〇〇五 出願 昭 四〇、五、七 意願 昭 四〇―一二二六五 登録 昭 四九、一一、二七
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三九三〇〇五の類似二 出願 昭 四六、八、三一 意願 昭 四六―三二〇六三 登録 昭 五三、八、一六
<省略>
三九三〇〇五の類似一 出願 昭 四八、一〇、一二 意願 昭 四八―三九〇七七 登録 昭 五二、二、二一
<省略>
三九三〇〇五の類似七 意願 昭 五一―三四〇二五 出願 昭 五一(一九七六)八月二七日 登録 昭 五六(一九八一)一〇月三〇日
<省略>